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文学的商品学

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


たとえば、「ファッション音痴の風俗小説」。

ひとつのテーマをめぐって、小説を読みくらべるという文芸評論。テーマは、
ファッションをはじめ、ホテル、バンド、食べ物など、9つにわたります。

文学作品に登場するモノたちが主役になっている、この一冊。

しかし、注目すべきなのは、〈なに〉が描かれているかではなく、そのモノ
たちが〈どう〉描かれているかという点に注目したところでしょう。それは、
まさしく斎藤美奈子さんの独創的な感性のなせるわざ。

恋愛小説を取りあげたファッション論や、ハードボイルド小説を取りあげた
メカニック論など、いわばモノフェチの領域に踏み込んでしまいそうな評論
とは、これはあきらかに一線を画しています。

それにしても守備範囲がひろいですね。(ま、文芸評論や書評がしごとです
から、あたりまえでしょうか)

取りあげられているのは、夏目漱石や森鴎外、谷崎潤一郎の作品から、いま
注目の江國香織や川上弘美、さらにはジュブナイルまで。

本の帯には、-----

商品情報を読むように、小説を読んでみよう。

庄司薫から渡辺淳一まで、のべ70人の82作品を自在に読みとく。

                        -----とありました。

■著者:斎藤美奈子 ■出版社:紀伊国屋書店 ■価格:税込1680円
文学的商品学_d0063999_1282456.jpg
by revenouveau | 2005-06-08 12:02 | 立読のようなもの
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