(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)
第二次大戦のさなか過酷な日々をしたたかに生きる双児の〈ぼくら〉の姿 を描いた「悪童日記」で一躍注目されたハンガリー出身の女性作家 アゴタ・ クリストフの自伝。 特徴的なのは、こうした著作にありがちなじぶんの個人データを披瀝する ことがほとんどなく、物語のように、おさないころのエピソードや記憶の 断片が淡々とつづられていくことです。 母国での貧困、そして難民としての国境越え。亡命先でのこころ満たされ ない日々。仲間の自殺。なによりも堪えがたい母語を抑圧する他国の言葉。 4歳のころから新聞をすらすら読め、書くことも好きだった〈わたし〉は、 占領下ではロシア語に、スイスでは未知のフランス語に包囲され、あたか も「文盲」のような状態を強いられてしまいます。 生きるために学んだフランス語で執筆をはじめ、作家として成功したもの の、それは母語を侵食しつづけるという意味において、いまも「敵語」と してかのじょのなかに… 人間を人間たらしめる言葉。はたして、それはいかなるものなのでしょう。 この作品では語られていない、かのじょの思いにまで想像力を喚起させら れる興味深い内容です。 ■著者:アゴタ・クリストフ ■翻訳:堤茂樹 ■出版社:白水社 ■価格:税込1470円 << よろしければクリックを
by revenouveau
| 2006-12-13 09:28
| 立読のようなもの
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