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スープ・オペラ

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


主人公は、35歳、独身。ある大学の総務部に勤める島田ルイ。

世田谷の古ぼけた一軒家で、かのじょから〈トバちゃん〉と呼ばれている、
叔母さんとふたりぐらし。

しかし、ある日、トバちゃんは、“県境のない医師”の第一号になろうと
いう志を抱くお医者さん(年下)と恋におち、かれといっしょに旅立って
しまうのです。

一方、ルイは、還暦をすぎたモテ男のトニーさんと、女性に迫られやすく
ふられやすい30歳の康介と出会い、ともにくらしはじめます。

女性ひとりに男性ふたりという、この関係は、かなり緊張感がありそうに
思えますが、じっさいは、そうとうゆるゆる。疑似家族のような、微妙で
あいまいな関係のまま物語はすすみ、登場人物たちも、その微妙さを楽し
もうとしているかのよう。

トニーさんの「曖昧なことはすてきなことだ」という言葉が、まさに、そ
れを象徴しています。

残りもののような鶏ガラも、スープにすれば、身と皮、骨のあいだにある、
いろいろな部分から、とってもいい味がじわりと…。そんな味わい深い、
うま味がつまった、この作品は、おとなが書いた、おとなのためのラブ?
ストーリーです。

■著者:阿川佐和子 ■出版社:新潮社 ■価格:税込1680円

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by revenouveau | 2006-03-15 09:16 | 立読のようなもの
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