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第四の手

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


いわゆるイケメンの、報道番組のレポーターであるパトリック・ウォーリ
ングフォードは、あるできごとがきっかけで、一躍“時のひと”に。

ライオン男。

インドのサーカス団でおきた事件をレポートするため、ライオンのおりの
前にたち、カメラにむかいました。

あっ、と思うまもなく、襲いかかるするどい爪。

数十秒のあいだに、かれは、左腕をまるごと失い、その瞬間は、カメラに
おさめられ、一部始終が放送されたのです。

ストーリー展開は、まるで映画のよう。

手の移植の第一人者と名高い医者、糞が大好きな犬を飼っているその息子、
事故でなくなった夫の腕をパトリックにと考える女性など、登場人物たち
にも、読み手のこころをくすぐる、不思議な魅力がいっぱい。

パトリックの行動をとおして、ひとの不幸をネタにする報道の姿勢を皮肉
をこめて描くことも、作者は、忘れていません。

笑えるようなことろもあるのですが、ジョン・アービングさんの小説は、
じっさい、暗い世界観によって書かれているというのもひとつの事実。

世界は災害にみちていて、もはや末期症状。けれども、そのなかに救い
の道があってほしい。そんな願いをこめて、アービングさんは、次々と
災害をおこしているような気もするのですが…

■著者:ジョン・アービング ■翻訳:小川高義 ■出版社:新潮社
■価格:税込2310円

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※原書の冒頭は、こちらでごらんいただけます。
by revenouveau | 2006-02-07 08:24 | 立読のようなもの
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