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畏れ慄いて

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


駐日ベルギー大使の娘として日本に生まれ育った、フランスの人気作家、
アメリー ノートンさんよる、ご自身の体験をモチーフにした小説です。

まずはじめに、この作品を読むこころがまえとして「これは、あくまでも
小説」であるという態度が必要だとお伝えしておきましょう。ここに登場
する日本は、日本であって日本ではない(「じゃぁ、どこだよ?」という
ツッコミ、ありがとうございます)と思ってお読みください。

               ●

主人公〈アメリーくん〉は、優秀な語学力をかわれ、日本に名だたる商社
ユミモト商事に入社。

けれども、その語学力がいかされることは、一向にありません。

くる日もくる日も、お茶くみやコピーとり、そしてトイレ掃除。

はじめは〈アメリーくん〉に優しかった上司のキャリアウーマンも、やが
ては、冷たい態度に… (けれど、かのじょは、ひそかに主人公の知性の
おもちゃにされ、プライドを傷つけられていくのです。ここは、ぜひ読ん
でいただきたいところ。微妙に説明しにくいような…)

異国(または、それまでとちがう環境)にあって、異なる価値観にザラつ
いた違和感を感じたとしても、それを笑ってしまえる、こころのゆとりが
あれば、困難も乗り越えていけることを〈アメリーくん〉は、畏れ慄きな
がらも、教えてくれたような気がします。

これは、外国人ではなくても、会社や組織のなかで、不本意な状況におか
れているひとにとって、共感をよぶ物語といえかもしれません。

               ●

この小説を原作に、2003年、フランスで、アラン・コルノー監督による
「Stupeur et tremblements」という映画がつくられました。

ちなみに、この映画には、フランスで女優として活躍中のブログフレンド、
辻かおりさんが、上司役として出演しています。

かのじょのブログでは、キャスティング時のエピソードなどを読むことが
できます。ぜひ、そちらもごらんください。

■著者:アメリー ノートン ■翻訳:藤田真利子 ■出版社:作品社
■価格:税込1575円

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by revenouveau | 2006-01-31 10:17 | 立読のようなもの
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