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透明な旅路と

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


雨のふる月夜。

主人公・吉行明敬のあたまに、ふっと、ひとつの言葉がうかびます。

     月の雨に濡れちゃいけん。

吉行明敬が中学生のときに亡くなった祖母の言葉。

かれは、行きずりの街娼の頸を締めて殺害し、車で逃亡中なのでした。

そして、街路灯一本ない道で、ひと組の少年と幼女に出会います。

時間を経てきたような感じがしない顔だちで、よく通る美しい声をもった
少年・白兎(はくと)。

風貌も、名前も、やけに古くさいと思わせる幼女・笹山和子。

はじめて会ったふたり。なのに、吉行明敬の心には、どこかで会ったこと
があるという思いが…

街娼を殺してしまったという後ろめたさと、ふたりへのもやもやした疑念
を抱きながら、車を走らせる主人公。

いつのまにか、吉行明敬の、心のすきまに入りこんでしまう少年と幼女。

しだいに、読み手である、わたしのなかで、現実と、そうでない世界との
境界があいまいになっていくのでした。

「バッテリー」で、第35回野間児童文芸賞を受賞した、あさのあつこさん
の、はじめてのモダン・ミステリーを、どうぞ、お楽しみください。

■著者:あさの あつこ ■出版社:講談社 ■価格:税込1470円

透明な旅路と_d0063999_726333.jpg
by revenouveau | 2005-09-22 07:27 | 立読のようなもの
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