(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)
この店であつかわれる品々は、ちかごろの「なんとか鑑定団」などにでてい るようなシロモノではなくて、あくまでも古道具。文中の言葉を借りれば、 「骨董じゃなくて、古道具」らしい。 そんな中野商店を舞台に、繰りひろげられる、ちいさな物語の数かず。 店主の中野さんと姉のマサヨさん、従業員のタケオくん、おなじく従業員で この物語の語り手ともいえるヒトミさんと、このひとたちをめぐるさまざま なひとたち。その風貌やしぐさ、癖までもが思いうかぶような、ていねいで あたたかな人物描写は魅力のひとつといえるかもしれません。 そういえば、作者の川上弘美さんが、なにかのインタビューで「登場人物は いずれもスケールのちいさなひとたち。それそれに、いろんな面で自己投影 しています」というようなことを話していたことを思いだしました。 ゆっくりとした日常のおだやかな空気が流れるなかで生まれるわずかなズレ やちいさな不協和音が、キャラクターのそれぞれに、よりいっそうの陰影を あたえていきます。 いちどに多くのひとが登場して会話がすすむ場面では、いわゆる雑音のよう なものもまじりますが、それはけっして嫌味ではなく、むしろそれによって リアリティのある風景ができあがっているように感じました。 「いつか『楡家の人びと』みたいに、ひとがおおぜいでてきて、いろいろな ことが起きる年代記的な小説を書いてみたい」と語る彼女の、これはだいじ な一歩なのかもしれません。 ■著者:川上弘美 ■出版社:新潮社 ■価格:税込1470円
by revenouveau
| 2005-06-20 14:13
| 立読のようなもの
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