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みんなで国語辞典!

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)
ベストセラー「問題な日本語」の版元が、国語辞典に載せたい言葉とその
意味、例文を募集したところ11万を超える応募が。

本書は、その中から約1300語を選び、〈若者のことば〉〈学校のことば〉
〈ネット・メールのことば〉〈業界・専門用語〉などに分類し、辞書のよ
うに編集したものです。

たとえば、〈若者のことば〉の項では…

   【イタい】  度が過ぎた哀れさ、痛ましさ。
   【鬼】    最上級を表す接頭語。
          「鬼むかつく」「鬼かわいい」
   【なくない】 否定したことについて同意を求める時に使う。
          「かわいくなくない?」

といった感じで、とかく評判のよくない言葉たちを収録。

正しさや規範といった面からみると甘受しがたいものも網羅されています
が、言葉を定義するという意味においては、とても勉強になります。

言葉に関心のあるひとには、ギザおすすめ! ^^

■監修:北原保雄 ■出版社:大修館書店 ■価格:税込998円

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by revenouveau | 2007-01-31 10:13 | 立読のようなもの

赤い指

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


甘やかされて育った中学生の息子・直巳、その息子を溺愛する妻・八重子、
認知症?の母・政恵。それぞれの世界に逃避したように日々をおくる三人
と、それにあまんじている一家のあるじ・昭夫。

なんとか家庭のカタチを保っているこの一家に、事件は起こります。

昭夫が八重子から切羽つまったようすの電話をうけたのは、ある金曜日の
夕方。重たい気持ちで家に帰った昭夫が、自宅の庭で目にしたのは、黒い
ビニール袋がかけられた少女の遺体。

直巳が、ちいさな女の子を家に引きいれ殺害してしまったのでした。

社会の良識にしたがって息子を自首させるのか、それとも、八重子がいう
ように、死体をどこかに捨てて家庭をまもるのか…

逡巡のあげく、昭夫は、後者を選んでしまいます。

止むに止まれぬ隠蔽工作と、それを追いつめていく刑事・加賀と松宮。

さりげなく、いくつもの伏線を用意して展開するストーリーは、さすが、
とうならせます。

■著者:東野圭吾 ■出版社:講談社 ■価格:税込1575円

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by revenouveau | 2007-01-30 09:49 | 立読のようなもの

紙の子守歌   (39)



 坂道をいくと、竹やぶをすぎたところで春恵が待っていた。
「もう、おすみですか」
「はい。勝次さんの簀編みの腕はさすがです。もちろん、奥さんのちから
も必要でしょうが、みごとなものです」
「ええ、おかあさんがいなければ、あんなに巧くいきません。まるで、ふ
たりでひとりのようになって編んでいくのですから、私もそばで見ていて
ふしぎなようです」
「ほんとうに仲のいいご両親で、春恵さんも幸せです」
「幸せ…」
 問いかえすような春恵の言葉には、微妙なひびきがあった。
「松野さん、お時間があれば、花を褒めにいきませんか。きっと、芝川の
桜も満開だと思います」
 松野は、富士宮の山をおりたところで、桜の古木が、たいそうたくさん
の花をつけていたのを思いだした。二羽の紋白蝶をみたすぐあとだった。
「はい。きれいなひとと花を褒めにいくなど、めったにないことです。よ
ろこんでお伴しましょう」
 まあ、と春恵は、袂をひろって松野をたたくふりをすると、こばしりに
坂道をくだっていった。
 春恵が足をとめたのは、葉蔵につれられて、松野がはじめて勝次の家を
訪ねた日、三人が顔をあわせたあたりだった。
 河原におりるとき、松野が、二、三歩さきだったゆき、春恵に手をさし
だした。春恵は、河原におりるのは慣れていたが、それにかるく指をのせ
た。わかい男の手にふれるなど、はじめてだった。背中のあたりに妙な感
じがあった。
 河原におりて対岸に目をやると、土手のうえに桜が三本ならんでいた。
いずれの幹も、子どもがひとり腕をまわせるほどの太さである。河原には、
ふたりのほかにだれもいない。すこしはなれたところから土手沿いに川柳
がずっと植えてあり、春の川面にゆらゆらと、やさしい情趣をうつしてい
た。

                           (つづく)

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「紙の子守歌」は、毎週月曜日・木曜日(平日)に掲載します。

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by revenouveau | 2007-01-29 09:31 | 小説のようなもの

アタシ、どこか間違ってる?  (26)

「きのうの会議は、かれの独壇場でした」


さて、この言い方のどこが間違っているのでしょうか。

正解例は、こちら...
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by revenouveau | 2007-01-26 10:19 | 美句のようなもの

紙の子守歌   (38)



 松野が勝次の家についたとき、勝次は、正子とふたりで簀編みをしてい
る最中だった。筒袖からのびた正子の手が器用にうごいていた。真竹の長
ひごを緯糸に、絹糸を経糸に、織物をつくるようにして簀を編んでいく。
絹糸を巻いている玉とよばれる、ちいさな道具がたてる音の調子が小気味
よい。玉は、径が三センチほどの糸巻きのようで、芯に鉛を流して錘りに
してあった。
 勝次は、松野の顔をみとめると、正子をうながして手をとめた。
「ちょうどいいところへこられました。いま、四分の一ほどできたところ
です。どうぞ、じっくりと具合をみてください」
 松野は、簀編みの台に寄っていって、編みかけの簀に目をおとした。簀
をいたわるようにしながらも、糸や長ひごのなん箇所かにつよく指をあて
ている。
「よろしいかと思います。ただひとつ、ここのところだけ、もうしこし詰
めをきつくしてください。編みが、わずかにあまいようです」
 松野は、まっすぐ勝次の目をみつめた。
 どれ、どこでしょうか、と腰をあげながら、勝次は、松野の指さきに目
をやった。瞬間、息をのんだ。
「わかりました。始末します」
 勝次は、なにか恐いようだった。松野が指摘した簀の部分は、二日まえ、
勝次が身体をこわしたときに編んだところである。勝次自身、自分ではそ
のときには気づいていなかったが、いまそういわれてみると、たしかに編
みがあまかった。弓をしていると葉蔵からきいていたが、眼力のするどさ
は、そのせいだろうか。勝次は、葉蔵にも、そんなところがあったのを思
いだしていた。目のまえの編みのあまさは、なみの職人ではわからない。
勝次は、なにか恐いものを思いながらも、一方でうれしい気持ちが沸きお
こってくるのを感じていた。
 ふたりが話しをしているあいだに、正子がだしてくれた煎茶を一服する
と、松野は、煎茶の味と湯かげんを褒めた。礼を失するとは感じたが、つ
ましい暮らしぶりに似つかわない茶葉をつかっているのが、こころのなか
ですこし気になった。
「梅雨があけるころまでに仕上げていただければけっこうです」
 正子に、もういちど茶の礼をいって、松野は、勝次の家をあとにした。

                           (つづく)

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「紙の子守歌」は、毎週月曜日・木曜日(平日)に掲載します。

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by revenouveau | 2007-01-25 10:14 | 小説のようなもの

東京バンドワゴン

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


舞台は、東京の下町、明治十八年創業の〈東京バンドワゴン〉という妙な
名前の古本屋。

物語は、三代目当主・堀田勘一(79歳)の妻で、すでに他界しているサチを
語り手にしてつづられていきます。

堀田家の住人は、勘一と、還暦に達した一人息子の我南人(元ロックミュ
ージシャン)、我南人の長女の藍子とその娘・花陽、長男の紺とその妻・
亜美と息子・研人、そして、我南人が愛人に生ませた二男の青。

そんなかれらの日常生活のなかで、謎のにおいがするできごとが、あれこ
れと起こるのです。

朝、気がつくと店の隅に二冊の百科事典があらわれ、夕方になると消えて
しまうという不思議、値付けを依頼された大量の蔵書が一夜のうちになく
なってしまう怪事件、…

ほのぼのとしたサチの語りも味わい深い、ときにおかしく、ときにせつな
い、やさしあにあふれたホームドラマのような作品です。

■著者:小路幸也 ■出版社:集英社 ■価格:税込1890円

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by revenouveau | 2007-01-24 09:29 | 立読のようなもの

桜ハウス

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


蝶子46歳、遠望子41歳、綾音36歳、真咲31歳。

かつて、二階建ての一軒家〈桜ハウス〉で、いっしょに暮らしていた女性
たちが、それぞれにさまざまな経験をして、7年ぶりに再会します。

色気より食い気の生活を送っている蝶子。

地味で奥手だった遠望子はシングルマザーに。

相変わらず恋の遍歴をかさねて修羅場を繰り返している綾音。

同居当時まだ学生だった真咲でさえも結婚と離婚を経験。

いずれにしても、いまは全員が独身なのでした。

子育てや親の介護など、それぞれに、以前はなかった問題をかかえながら
も、昔なじみの4人がそろえば、そこは居心地のいい場所に…

現在の境遇を受け入れ、ささやかな満足と幸福とを感じている女性たちの、
生活と人生観をこまやかに描いた、藤堂志津子さんによる連作短編集です。

■著者:藤堂志津子 ■出版社:集英社 ■価格:税込1575円

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by revenouveau | 2007-01-23 10:15 | 立読のようなもの

紙の子守歌   (37)



「竹が、すきですか、ときいたんです。そんなところで、じっと竹をなが
めていたから」
 春恵は、うなずいた。
「竹は、すっと、まっすぐに伸びますし、しなやかにしなります。世間で
は、竹を割ったような性格という褒め言葉もあるくらいですし、そんなと
ころも、なんとはなしに好ましく思います」
 自分が竹やぶにいる、ほんとうのわけを松野に見すかされはしなかった
か、と春恵は目をあわせずにこたえた。春恵の胸には、だれにもいわず、
だれにもいえず秘めていたことがあった。しかし、とうぜん、松野がそう
したことを知るはずもなかった。
「すっと、素直でまっすぐな竹、ですか…。しなやかで美しい。そういっ
た意味では、春恵さんに、どことなく似ているような気がします」
 素直とか、美しいとか、春恵が口にしなかった言葉がまじっていた。そ
れは、男の女へとむかう感情のうごきなのか。そんな、松野の言葉に、春
恵は首の根まで赤らむようだった。
 松野は、照れをかくすように、訪問のわけをのべた。
「きょうは、勝次さんのところに簀編みの具合をみにきたんです」
「長くかかるのでしょうか」
「いや、半ときもかからないと思いますが…」
「では、私は、ここでお待ちしています」
 春恵は、しばらく考えたのち、松野にそう告げた。
 笹葉のにおいが、生いたつ竹の、一本いっぽんを、いきいきとかたちづ
くっていた。

                           (つづく)

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by revenouveau | 2007-01-22 10:20 | 小説のようなもの

アタシ、どこか間違ってる?  (25)

「わたしは、あのひとの二の舞を踏みたくない」


さて、この言い方のどこが間違っているのでしょうか。

正解例は、こちら...
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by revenouveau | 2007-01-19 10:49 | 美句のようなもの

紙の子守歌   (36)



 松野がふたたび春恵と顔をあわせたのは、つぎの年の春だった。

 紙漉きの簀桁につかうものでなくとも、なにかの道具をつくるのにつか
う竹は、たいてい春や夏に切りだすことはしない。その時季の竹は成長期
にあって糖分がおおく、製品になってからの虫食いや傷みがはやくに起こ
る。だから、注文された簀桁には、秋から冬にかけて切りだした竹のあぶ
らをぬき、しばらくかげ干しし、ねかせてからつかう。松野は、その日、
仕上がるまえの簀のでき具合をたしかめるため勝次の仕事場をたずねたの
だった。
 木の間からこぼれるやわらかな陽射しにまぎれながら、二羽の紋白蝶が
あとになりさきになりして山かいの道を舞っていた。
 まもなく勝次の仕事場というところである。坂道をのぼりながら、松野
が、ふと山側に目をやると、竹やぶのなかに女の人影があった。目をこら
すと、背をこちらにむけた春恵の姿がみえてきた。松野は、足うらを地面
にするようにして、竹のあいだを分けていった。それは、葉蔵から教えら
れた竹やぶの歩き方だった。笹葉などで地のおもてがかくれている竹やぶ
では、思いがけない切り株で足を傷つけることがあると葉蔵はいった。
「竹が、すきですか、春恵さん」
 とつぜんの男の声に、女は、はっとふりむいた。やはり、春恵である。
すこしよろけたようだった。春恵は、竹に手をもたせながら、もう一方の
手を胸もとにあて、松野さんでしたか、とやっと口をひらいた。
「なにか、おっしゃいましたか」
 春恵は、木綿の藍無地をきっちりと着てたっている。歳にしては地味す
ぎるきものが、おっとりとした美しさをかえってひきたてていた。

                           (つづく)

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by revenouveau | 2007-01-18 11:08 | 小説のようなもの