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2006年12月28日〜2007年1月10日

上記の期間は、ブログ記事のアップをお休みさせていただきます。

書きこんでいただいたコメントにご返事するのも、みなさんのところに
おじゃまするのも、かなり気まぐれな感じになると思いますが、どうぞ、
おゆるしください。

新しい年が、みなさんにとって、すてきな年でありますように。
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by revenouveau | 2006-12-28 10:05

風が強く吹いている

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


子どものころ「運動会の前日には、てるてる坊主を逆さにつるしていた」
というほど運動が苦手な三浦しをんさん。

そんなかのじょが、注目したのは、学生駅伝の最高峰ともいえる箱根駅伝。
ある年のお正月、テレビ中継をみていて、その小説化を思いついたのだと
いいます。

高校生のとき、名ランナーとして活躍しながら陸上界からはなれ、東京の
寛政大学へとすすんだ蔵原走(かける)と、4年生の清瀬灰二(はいじ)
との出会いからはじまる物語。

才能に恵まれ、走ることを愛しつつも、走ることから見放されかけていた
ふたりは、その出会いをきっかけに、無謀にも、それまで陸上とは縁のな
かったメンバーと、たった10人で、箱根駅伝に挑むのです。

後半の大部分を占める本選場面は、まさに圧巻。

たすきをつなぐ各区間ごとに、それぞれが主人公となり、家族との葛藤、
過去の挫折など、それまでの人生が、走ることとオーバーラップしながら
リズミカルにつづられていきます。

   俺たちが行きたいのは、箱根じゃない。走ることによってだけ
   たどりつける、どこかもっと遠く、深く、美しい場所…

そんな、ひとりひとりの「頂点」をめざすかれらの姿に引き込まれていく
一冊です。

■著者:三浦しをん ■出版社:新潮社 ■価格:税込1890円

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by revenouveau | 2006-12-27 09:47 | 立読のようなもの

真 鶴

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


夫・礼の失踪後、仕事を通じて知り合った妻子ある男性・青茲との関係を
つづけながら、なお姿を消した夫への思いを断ち切れない主人公の京。

礼が日記に残した「真鶴」という言葉と、「ついてくるもの」に引きよせ
られるようにして、かのじょは、真鶴を訪ねます。

そこで繰り広げられる、夢とも現実ともつかないふしぎな世界。

目の前にいる青茲との関係と、思い出のなかにいる礼へとむかう感情とが、
京というひとりの女性の裡で、さまざまにうごめき、あるいはかたちを変
え、あるいは不変となり、描かれていきます。

物語に深みをそえるのは、あいまにつづられる、京の母と娘の百とによる
女性三人の共同生活。

みじかいセンテンスを積み重ねていく文章にも、京という女性の気持ちの
破綻や、こころの乱れを感じさせていて巧みです。

■著者:川上弘美 ■出版社:文藝春秋 ■価格:税込1500円

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by revenouveau | 2006-12-26 09:35 | 立読のようなもの

紙の子守歌   (33)



 芒種をすぎたころだから、しもの方では、田植えがはじまっていた。
富士宮の山をいったんおりて、芝川に沿ってのぼってきた葉蔵は、河原
に春恵がいるのをみつけた。
「おーい、春恵さーん」
 勝次さんの娘さんです、と葉蔵は、あとからついてきた松野に教えた。
勝次は、葉蔵が富士宮にきて以来、紙を漉くための簀桁づくりを頼んで
いる職人である。葉蔵が、春恵とよんだ娘は、二十歳前後だろうか、松
野よりも三つ四つ歳若にみえた。
 葉蔵は、その夏、松野の家をでて、和田島にかえることになっていた。
せいの父がからだをこわし、家のことをふたりでみなければならなくなっ
たためである。そこで、これまで葉蔵ひとりにまかせきりだった紙漉きの
道具だても、これからは、松野がひとりでやりくりしていかなければなら
なくなったのだ。
 春恵は、浅瀬の流れのなかで、足をじょうずに引きあげながら川岸にあ
がってくる。白いふくらはぎが流れをさえぎって、ちいさな渦をいくつも
つくっていた。前褄をとって歩く木綿絣の裾に、ときおりまばゆい輝きが
みえた。
「坂本さん、こんにちは」
 春恵は、あいさつしながら、葉蔵のうしろにいる白い開襟シャツを着た
松野の姿に目をやった。
「どうも。あの、こちらは、松野泰昭さんです」
 葉蔵は、きょう松野をともなってきた事情を春恵に説明し、ふたりをひ
きあわせた。あいさつを交わすふたりには、同世代どうしがもつはみかみ
があった。
「さあ、葉蔵さん、いそぎましょう」
 松野は、手ぬぐいで額の汗をぬぐうと、照れをかくすように、芝川沿い
の坂道をのぼっていった。

                           (つづく)

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「紙の子守歌」は、毎週月曜日・木曜日(平日)に掲載します。
※次回は、2007年1月11日の掲載となります。

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by revenouveau | 2006-12-25 09:59 | 小説のようなもの

アタシ、どこか間違ってる?  (24)

「お愛想、お願いします」


さて、この言い方のどこが間違っているのでしょうか。

正解例は、こちら...
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by revenouveau | 2006-12-22 09:45 | 美句のようなもの

紙の子守歌   (32)



              ■□■

 対岸の山の斜面のうえの方で、萌えている緑のなかに、石南花の赤が
ぽつんとうかんでいた。山裾では、まだ花のつかない美女柳の葉がうっ
すらとあおい。
 春恵は、うれしいことやかなしいこと、考えごとなどがあるとき、家
のまえの坂道を一キロほどくだって河原におり、芝川の流れに目をおと
すのが習いになっていた。
 芝川は、山かいをくねるように奔って、途中から富士川へとそそぐ。
かつて、この清流でとれる川海苔は、大谷川海苔や日光海苔などととも
に、かずすくない味覚として、各地に名をはせていたという。
 つねにそこにありながら、しかしつねに移りかわっていく、清らかな
水のまえに身をおいていると、春恵は、心を洗われていくようで静かな
気持ちになった。
 七か八つのころだろうか、春恵は、父にひどくしかられたことがあっ
た。ふだんはやさしすぎるほどの父だったが、そのときの怒りようは、
ただごとではなかったと春恵はおぼえている。無我夢中で、家をとびだ
した。気がついたときには、流れのまえにたっていた。清流に手をひた
していると、涙を流しながらも、なにかなぐさめられるようなやすらぎ
があった。しばらくそうしていると、うしろにひとの気配が感じられた。
父だった。父は、ほら、と声をかけて春恵の手をとった。手は、厚く、
あたたかだった。さっきよりも、もっと涙がでた。河原からあがり、坂
道にでると、ほほえみをうかべた母の顔がまっていた。春恵が、なにか
につけて芝川の流れをながめにいくようになったのは、そのときからの
ことである。

                           (つづく)

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「紙の子守歌」は、毎週月曜日・木曜日(平日)に掲載します。

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by revenouveau | 2006-12-21 09:45 | 小説のようなもの

石の葬式

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


近代化から取り残されてしまったギリシアの寒村。

神話の世界とつながっているかのようなこの場所で繰り広げられるふしぎ
な物語をつづった連作短編集です。

大地震の到来をハルマゲドンだと叫ぶ神父、双子の娘を地下室につないで
育てている父親、ホメロスを暗誦するオウム、半身半馬の衣装をつけケン
タウロスだと言い張る酔っ払い、七面鳥の羽を蝋で貼りつけ空を飛ぼうと
する男、…

物語を読みすすめながら、素朴でもなく、善良でもなく、むしろ奇妙でさ
えある登場人物たちの行動にとまどいながらも、どこかに人間くささを感
じてしまうのもたしか。

ギリシア人である作者のパノス・カルネジス氏の自国への思いと、創作を
学んだというイギリス仕込みのユーモア感覚が一体となった一冊です。

■著者:パノス・カルネジス ■翻訳:岩本正恵 ■出版社:白水社
■価格:税込2520円

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by revenouveau | 2006-12-20 09:54 | 立読のようなもの

竜巻ガール

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


高校二年生の哲夫は、父の再婚相手が連れてきた女の子と同居することに。
突然できた妹・涼子は、なんと、同い年のガングロ娘。

通う高校もおなじ。その日から、過激で型破りな涼子に振り回される、哲
夫の日々がはじまったのです。

表題作のほかに収められているのは「旋風マザー」「渦潮ウーマン」「霧
中ワイフ」の3編。

タイトルだけではなく、中身もしっかりとおもしろい、テンポのいい軽快
な物語をあつめた短編集です。

■著者:垣谷美雨 ■出版社:双葉社 ■価格:税込1680円

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by revenouveau | 2006-12-19 09:45 | 立読のようなもの

紙の子守歌   (31)



 山並には、思いがけなかった。
 萱の簀桁は、文献を読んで、かつてそうしたものがあったとだけ記憶
していた。真竹の長ひごのかわりに萱をつかい、絹糸のかわりに馬の尾
からとった毛をつかう。本来の材料が、高価であったり事情がゆるさず、
手にはいらなかった時代の代用品だったというが、いまそれをつくろう
とすれば材料を用立てするのに手がかかり、かえって価も手間もかかっ
てしまうだろう。簀桁の定寸は、幅が約一四五センチで奥行きが約八〇
センチといわれているから、萱の簀桁は、その三分の一ほどのおおきさ
である。山並は、いま、自分の目の前に、それがあることが信じられな
かった。
「こうしたものを実際に目にできるとは…。まさに、望外のよろこびで
す」
 山並の口調には、興奮がまじっていた。
「この萱の簀桁を民芸資料館に展示することができれば、紙を漉くひと
にとっても、また世のひとにとっても貴重な機会となるにちがいありま
せん」
「もうしわけありません、山並さん。この簀桁は、門外不出でして…」
 松野は、口籠った。その言葉は、これまでの松野のおなじ口からでた
とは、山並には思えなかった。それを隠そうとする職人もいるなかで、
紙料の調合なども公開すると語った松野だったのに。
「それは、またどうして」
 山並は、いけないと思いながらも、松野に詰めよっていた。
「お話ししなければ、納得していただけそうもありませんね。これは、
あれにも話したことがありません」
 松野は、さきほど夫人がでていった戸口のあたりに顔をむけた。
「しかし、ふしぎな方です。山並さんに請われると、なぜか口をひらい
てしまいます」
 この男のどこに、そうしたちからが秘されているのか。息子ほども歳
のはなれた山並のことを、松野は考えてみたが、はたしてわからなかっ
た。そして、問わず語りのようにして、己れの過去をあからさまに語っ
ている自分も、松野には、やはり謎のようだった。
「この簀桁には、ある女性との思い出が込められているのです。そのひ
との名を、そうですね、春恵さんとしておきましょう」
 そう前置きすると、松野は、ひとくち煎茶をすすり、ゆっくりと語り
はじめた。
 漉き舟の水は、あるかないかの初秋の風になでられて、ちいさな波を
たてていた。

                           (つづく)

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「紙の子守歌」は、毎週月曜日・木曜日(平日)に掲載します。

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by revenouveau | 2006-12-18 09:32 | 小説のようなもの

アタシ、どこか間違ってる?  (23)

「かのじょは、きのう、愛想をふりまいていました」


さて、この言い方のどこが間違っているのでしょうか。

正解例は、こちら...
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by revenouveau | 2006-12-15 09:35 | 美句のようなもの