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しろのあお

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


ほんとうの書名は「しろのあお 小学生に学ぶ31のこと」。

〈しろのあお〉とは、主人公、小学校4年生の城野あおくんのことです。

小学生のころ、つまりこどものころには持っていて、おとなになるにつれ
て、いつのまにか失ってしまった大切なキモチを思い出させてくれる本。

マンガで描かれた、家族や先生、友だちと〈あお〉くんの日常をテキスト
にして、上大岡トメさんが感じたことや学んだことをエッセイにまとめて
います。

各レッスンのおわりに添えられた「気のりしないことでも、自分のできる
ことを探して一生懸命やろう」「毎日が『本番!』と思おう」「自分に都
合のいい言い訳はやめよう」などの〈学んだこと〉は、なるほどとうなず
けるものばかり。

ふだんの、ちいさなことや生活から、じぶんを変えていこうという提案を
まとめたミリオンセラー『キッパリ!』の著者による一冊です。

■著者:上大岡トメ ■出版社:飛鳥新社 ■価格:税込1260円

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by revenouveau | 2006-06-30 09:04 | 立読のようなもの

め き き   (24)



 ふだんは、たいていふたりきりだが、ときおり見舞い客がきて、にぎ
やかになることがあった。
 ある日、宮内幸蔵と妻の光江が見舞いに顔をだした。
 夫妻は、真野の骨董仲間でもあり、ふるくからの知り合いでもある。
また、静子は、書という趣味を通じて、幸蔵と親しくしてもいたのだ
った。
「おひさしぶりです。奥さん」
 幸蔵は軽くあたまをさげると、かんたんだが、心のこもったあいさつ
をした。
 気のないおためごかしの言葉を、病人があまりにも敏感に感じとるの
を、肝臓障害で入院したことのある幸蔵はよく知っていた。
「これを、どうぞ」
 そういって、幸蔵は、ひらいた風呂敷から見舞いの品をだし、静子に
手渡した。孫次郎を写した面だった。この面は、のちに孫次郎と改名し
た金剛右京久次が、亡くした妻の面影を偲びつつ打ったと伝えられるも
のである。
 金剛流の演能では、この面を、鬘物の人気曲としてよく知られる〈松
風〉などにつかっていた。

                           (つづく)

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「めきき」は、毎週月曜日・木曜日(平日)に掲載します。

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by revenouveau | 2006-06-29 09:17 | 小説のようなもの

Sauce Aioli

■INGREDIENTS
3 gousses d'aile
1 jaune d'oeuf
120ml d'huile d'olive
1c. a soupe de jus de citron
sel

■PREPARATION
1)Epluschez les gousses d'ail.
2)Mettez-les dans le mortier avec une pincee de sel at
  ecrasez-les avec le pilon.
3)Ajouter le jaune d'oeuf. Melanger bien.
4)Puis petit a petit, incorporer de l'huile lentement sans
  cesser de remuer jusqu'a obtention d'une consistance
  aeree et gonflee, genre mayonnaise.
5)Terminer par le jus de citron.



※日本語訳をごらんになる場合は「more...」をクリックしてください。
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more...〈日本語訳〉
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by revenouveau | 2006-06-28 09:35 | 仏語のようなもの

という、はなし

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


本のうたい文句は「喜怒哀楽24本入り。読書をめぐる小さな絵物語集」。

夜汽車に乗っている黒猫、縁側にすわっている虎、屋根のうえのシロクマ、
シーソーで遊ぶライオン…。人気イラストレーターの フジモトマサルさん
が描いた、いろいろな動物がいろいろな場所で読書をしている、ほのぼの
とした絵に、吉田篤弘さんが文章をつけた作品です。

じつは、これ、筑摩書房のPR誌「ちくま」での連載を書籍化したもの。

イラストと文章が、それぞれに補完しあうというのではなく、イラストだ
け文章だけでもじゅうぶんに楽しめるできばえが魅力。

一枚の絵に触発された想像力は、まるで寓話のように、読み手を思いがけ
ない世界へとみちびいてくれます。

■著者:吉田篤弘 ■絵:フジモト・マサル ■出版社:筑摩書房
■価格:税込1470円

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by revenouveau | 2006-06-27 09:44 | 立読のようなもの

め き き   (23)



 医者があらわれたとき、真野は、ぼんやりと天井をながめていた。医
者の表情には、すこしばかりの安堵がある。彼は壁ぎわの白いボードに、
かんたんな図を描きながら、いま行なわれたばかりの手術の内容を、真
野に伝えた。
「手おくれではなかったのですが、かなり進行したものでした。冒され
た部分は、すべて取り去りました。こちらも、できるかぎりの手をつく
しましたので…」
 五年をみて再発しなければ完治したと考えてよいでしょう、と五十半
ばの医者は、真野の目をまっすぐ見つめて説明した。
 五分五分か。真野は、そう考えたが、ひとまずは安心した。
 術後の経過はよく、しばらくして静子は退院した。
 あのときは、たいへんだったな。まさか病室から花見をするとは思わ
なかった。そんな軽口が真野の口からでるようになり、ふたつめの桜の
季節をむかえ、そして夏がすぎたころだった。
 沈黙をつづけていた癌が、静子の身体を内側から崩しはじめたのであ
る。かたい岩盤のしたで静かに息をひそめていた伏流水が、やわかかな
層にあたって、一気に噴きだしたようだった。
「苦労をかけます…」
「なにが、苦労なものか。わたしは、もともと仕事がすきなほうではな
いからな。こういうのも、いい気分転換になる。よけいなことを考えず
に、ゆっくり静養しなさい」
 病院は完全看護になっていたにもかかわらず、真野は、まいにちほと
んどベッドの脇にいた。

                           (つづく)

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by revenouveau | 2006-06-26 19:45 | 小説のようなもの

ぼくがつ ぼくにち ぼくようび

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


昨年、日本人ではじめて“児童文学のノーベル賞”ともいわれる「アスト
リッド・リンドグレーン記念文学賞」を受賞した絵本作家・荒井良二さん
の絵本。

文章もすべて手書きで、荒井さんの魅力をあますところなく伝えてくれる
一冊となっています。

たとえば、…

   (ぼくがつ ぼくにち ぼくようび)
   乗りたかったバスが行ってしまったので、ぼくはあきらめて
   今日はここでのんびりしようと思って、村のまん中にある大
   きな木の下で休んでいたら、ヤギや犬や子供がきて、牛もオ
   トナもやってきておしゃべりをはじめたので静かな木陰はず
   いぶんにぎやかな場所になって、誰かがタイコをたたきはじ
   めたらみんなが歌いだしたよ!
   バスに乗れなくて、よかったあ!

こころにひびいてくる、つぶやきのような言葉たちが、ちいさかったころ
のピュアな日々を思いおこさせてくれそうです。

■著者:荒井良二 ■出版社:平凡社 ■価格:税込1260円

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by revenouveau | 2006-06-23 09:39 | 立読のようなもの

め き き   (22)



 十年ほど前の春のある日、静子は、とつぜん出血した。真野が、沼津
のデパートでひらかれていた中国古陶磁の展覧会にでかけた日だった。
 家に戻ると、妻はふとんも敷かずに畳のうえに横になっていた。暮れ
方なのに燈もつけず、青白い顔が闇のなかにうかんでいる。
「おい、静子! どうした」
「いえ、なんでもありません。こうして横になっていれば、すぐによく
なりますから。大丈夫です」
「馬鹿な! こんな青い顔をして、なにが大丈夫なものか」
 真野は着ていた羽織をぬいで静子にかけると、たっていって救急車を
よんだ。
 病院で、静子は子宮癌と診断された。ふたりのあいだに子がないのは
そのせいだったのか、と真野には思われたが、そうではなかった。
 身体のようすが落ち着くのを待って、三日後に手術が行なわれた。
 静子は麻酔をかけられ、手術室に運ばれた。おおきな扉が口をひらき、
医者の一団と妻が吸い込まれ、手術中のランプが点灯するのを、真野は
祈るような気持ちで見つめていた。だが、なにをどこに祈ってよいのか、
真野にはわからなかった。
 その場に立ちすくんでいる真野を見つけて、ひとりの女性看護師が、
時間がかかりますからどうぞこちらへ、と手術準備室と書かれた部屋へ
案内した。
 静子の手術は、三時間半におよんだ。手術をおえた医者は、真野の待
っている手術準備室へ足を運んだ。

                           (つづく)

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【さえらメモ】「福智無量」について
前回の文中に「福智無量」とあったことで、何人かの方からコメントを
いただきましたので、ここで解説させていただきます。
もともと、この文言は大乗仏教(とりわけ法華経)の教典に散見される
もので、仏法の信仰によってかぎりない(無量≒無限)福運と智慧とを
得ることができる法理をあらわしたものです。
ふだん着の言葉でいえば、しあわせにあふれ、ゆきづまりのない生活を
おくっている姿といえるかもしれません。
ちなみに、七福神のひとりでもある福禄寿の徳をあらわす言葉としても
この「福智無量」がつかわれることがあります。
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by revenouveau | 2006-06-22 09:51 | 小説のようなもの

Clafoutis aux Cerises

■INGREDIENTS
500g de cerises
125g de sucre
125g de farine
3 oeufs
300ml de lait
50ml de kirsch
sel
beurre

■PREPARATION
1)Lavez les cerises.
  Disposez les dans un saladier puis ajoutez la moitie du
  sucre ainsi que le kirsch. Laissez macerer 20 minutes.
2)Beurrez une toutiere.
3)Melangez dans un saladier la farine tamisee, le sel et
  le reste du sucre. Ajoutez un a un les oeufs en melangeant.
  Terminez par le lait. Melangez intimement.
4)Parsemez les cerises dans la tourtiere puis versez la
  preparation par dessus.
5)Cuisez le tout au four a 180℃ pendant 40 minutes environ.
6)Laissez refroidir a temperature ambiante.
  Servez froid.



※日本語訳をごらんになる場合は「more...」をクリックしてください。
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more...〈日本語訳〉
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by revenouveau | 2006-06-21 09:23 | 仏語のようなもの

おめでとう

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


よるべない恋の12景。

川上弘美さんならではの、恋をテーマにした、風変わりな短編集です。

もうけっして若いとはいえない男女の(ときには女どうしの)、幸せなよ
うでありながらも、またどこかに翳りをかかえてもいるようなゆるゆると
した恋愛感情。

愛していたタマヨさんの嫁ぎ先に会いにいく女性の話「いまだ覚めず」。

モモイさんという女性の幽霊に取り憑かれる「どうにもこうにも」。

むかし付きあっていた男性・竹雄とナイターを観にいく「夜の子供」。

など……

冬の日だまりのなかで寝息をたてている猫のように、静かで、淡々とした
文章が、その情景をそっとすくいとっていきます。

さすが、川上さん。

本のおわりに配された表題作の「おめでとう」は、「西暦三千年一月一日
のわたしたちへ」という副題がそえられていて、すがすがしくもせつない
思いにさせられる秀逸な物語です。

■著者:川上弘美 ■出版社:新潮社 ■価格:税込1365円

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by revenouveau | 2006-06-20 09:19 | 立読のようなもの

め き き   (21)



               ■□■

 大晦日の夜半、真野は自宅の居間で、炬燵にもぐり酒を呑んでいた。
住まいは、皺紙の暖簾で仕切った、店の奥にある。
 店は一週間前にしめ、三日前に暮れの仕事をおえた。
 手もとの酒がなくなると、真野はその都度たっていって、一本ずつ燗
をつけた。薬鑵のなかに小皿を沈め、徳利がじかに底であたらないよう
にして、ゆっくりあたためていくのが真野のやり方だった。そうして、
きりと熱い燗をつけていく。
 肴は、ごまめと海老の鬼瓦焼で、ひるまのうちに、保雄の母が持って
きてあった。ふっくらとした女の手を感じる味には、ひさしく会ってい
ない。
 床の間には、古代裂の色紙掛けに、妻の静子が書いた墨跡がかけてあ
った。
 どこで見つけてきた言葉なのか、真野は知らなかったが「福智無量」
というのが書いてある。それでも真野は、それがなんとなく気に入って
いて、年の暮れから年始にかけて床に飾るのが、ここ数年のならいにな
っていた。
 妻とともに、旧い年をおくり、新しい年をむかえていく。知ってか知
らずか、そんな思いの片端が、真野のどこかにあったのかもしれない。

                           (つづく)

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by revenouveau | 2006-06-19 09:13 | 小説のようなもの