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僕らの事情

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


この作品の語り手は、15歳のネイサン。

クラスで目立つ存在ではないけれど、仲間と学校生活を楽しんでいるごく
ふつうの少年です。

そして、同級生で親友のサイモン。かれは、筋ジストロフィーという病気
で車椅子生活を送っていますが、頭の回転がはやく、ユーモアのセンスも
抜群でクラスの人気もの。

死にいたる病のため、しだいに衰えていくサイモンを目にするネイサンは、
人間の、とりわけ親友の生と死に直面することで、それまでとはちがった
見方ができる少年へと成長していきます。

そんななかでも、ふたりは、女の子や、ロールプレイング・ゲームに夢中。
だからこそ、胸にひびいてくるものがあるのかもしれません。

そして、なによりも注目してほしいのは、ふたりの関係。

ネイサンが、サイモンのことを「同情」の眼をとおしてみていないところ
がすばらしい。

「めっちゃいいやつ」だから、いっしょにいただけという言葉に、それは
凝縮されているような気がします。

■著者:デイヴィッド・ヒル ■翻訳:田中亜希子 ■出版社:求龍堂
■価格:税込1470円

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by revenouveau | 2006-05-31 09:24 | 立読のようなもの

世界のはてのレゲエ・バー

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


商社勤めの父親に海外赴任の社命が下り、ニューヨークに移り住むことに
なった17歳の高校生コオ。

アメリカというイカした国でスパイク・リーの映画「スクール・デイズ」
のような、スリルにあふれた学校生活が味わえると思ったのも、つかのま。
編入したのは、駐在員家庭の典型的な子女があつまる、日本人オンリーの
私立高校でした。

せっかく日本をはなれてきたのに、また、新しい“ちいさなサークル”に
放り込まれたような感覚。

そんなコオが、退屈きわまりない学校のかわりに通いだしたのは、レゲエ・
バーでした。

その名も〈smallest Bar in NY〉。

そこで出会う、いろいろなひとやできごと。

日本人のガールフレンド、ホームレス、レゲエ・ミュージック、…
そして、日本での元カノの死。

亡くなったおじいさんが残してくれたピンホール・カメラを抱え、ニュー
ヨークという、ひとつの装置のなかで、かれは、すこしずつ大人になって
いくのです。

■著者:野中ともそ ■出版社:双葉社 ■価格:税込1680円

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by revenouveau | 2006-05-30 09:25 | 立読のようなもの

め き き   (15)



               ■□■

 その夜は、冴香がつくってきた弁当が夕飯になった。
 仕事の状況や、これからはじめようとしていることなど、おたがいの
思うまま、感じるままを語りあううちに、ときは流れ、しだいに言葉は
とぎれていく。
 しんと冷えた秋の夜がひろがっていくなかで、生身の女の底を流れて
いた情念がたちまちのようにほとばしる。冴香の目が、はらはらとひか
りをこぼしながら、静かにとじられていく。見る間に、女は、くずれて
きた。
 保雄の肩先に、冴香の耳朶を貫いたピアスのかざりがかすかにふれる。
思いのたけを自分にあずけようとする女がそこにいる。ふっと心をとか
すような匂い。保雄は自分のなかに流れていた冴香への思いが堰をきり
あふれていくのをつよく感じた。
 いちど冴香をやさしくひきはなし、ふたたび抱きよせると、くちびる
を重ね、やがてふたりは男と女のことになっていく。離れのそとには、
虫の声がしきりにきこえていた。
 やわらかな朝の陽がもれる山家の離れで、保雄は目をさました。部屋
が、いつもと違うもので満たされているように感じる。
 ふとんに埋もれたままで、目をよこにやると、息のかかるほど近くに
冴香の顔があり、静かに寝息をたてている。保雄の目ざめたのに気づい
て、冴香は顔を赤らめ、ふとんに隠れた。のびをするふりをして男は手
をのばし、女の肩にふれる。夢のつづきにいるような余情のなかで、ふ
たりはまたひとつになっていく。
 それから、冴香は二日のあいだ保雄とともに工房ですごし、朝となく
夜となく、たがいの心のありかを探るように身体をかさね、わずかのあ
いだに、男と女は情感をわけあっていった。

                           (つづく)

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「めきき」は、毎週月曜日・木曜日(平日)に掲載します。

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by revenouveau | 2006-05-29 09:17 | 小説のようなもの

海のふた

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


よしもとばななさんにとっては、35年ほど通いつづけ、第二の故郷とも
いえる西伊豆の土肥の町への恩返し的な物語です。

東京の美大(短大)をでて、ふるさとである海辺の町にかえり、大好きな
かき氷の店をひらくことにした主人公の〈まり〉。

雄大な景色を誇る南の島へ移住しようとしていた夢をあきらめて、故郷に
かえってみたものの、かのじょが知っていて大切にしていたものはみんな
なくなってしまっていたのです。

けれども、ふるさとである土肥の町へのこだわりをすてず、ちいさな店を
きりもりする毎日。

ある年、かのじょは、母の知り合いの娘で、顔におおきなヤケドのあとを
もつ女性〈はじめちゃん〉と、ひと夏をすごすことに…

そこでくりひろげられる、ふたりの交流。

こころにしみる言葉が、会話のあちこちにちりばめられています。

そして、おなじみの「ばなな節」。

途中におさめられている名嘉睦稔さんの版画もいい味をだしています。

■著者:よしもとばなな ■版画:名嘉睦稔 ■出版社:ロキング・オン
■価格:税込1575円

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by revenouveau | 2006-05-26 10:44 | 立読のようなもの

め き き   (14)



 工房は、まず二畳ばかりの土間になっており、土間の右手、窓の下は
ちいさな炊事場になっていた。正面の手前は三畳ほどの板の間で、奥は
おなじくらいの広さの畳敷きである。
 仕事は板の間でするらしく、打ちかけた面や道具などが置いてあった。
木くずは散乱していたが、きたない印象なく、むしろ整然として見えた。
「電話は大家さんのところにしかないので、そうとうな急用でないかぎ
りつかわないことにしてるんです。携帯なんてのも、ぼくには必要あり
ませんし…。家のものも連絡の必要があれば、手紙をよこすか、誰かを
つかいによこします。隠居しているわけじゃないんですが、仕事がはじ
まると、ひと区切りつくまで、なにも手につかなくなってしまうもので
すから」
 もしかしたら、このあいだの取材のときに話したかもしれない。保雄
はそう思いながらも、冴香の前で、なぜかつねになく饒舌になっている
自分がいることを、ふしぎな感情でとらえていた。
「ところで、きょうはどういったことで、こちらへ…」
「いえ、べつに…。これといった、たいした用事ではないんです。しば
らく、面をながめさせてください」
 冴香は、保雄がだした煎茶をもらい、しばらく面をながめていたが、
また寄せていただいてもよろしいでしょうか、と保雄にたずねると、身
じまいをして帰っていった。
 それをさかいに、冴香はたびたび〈草木庵〉に顔をだすようになった。
 どちらからともなく、おたがいに思いをよせあっているのを感じたの
は、まもなくのことである。

                           (つづく)

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「めきき」は、毎週月曜日・木曜日(平日)に掲載します。

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by revenouveau | 2006-05-25 09:26 | 小説のようなもの

クローズド・ノート

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


主人公の大学生・香恵が、あたらしく住みはじめた部屋にのこされていた、
前の住人の忘れ物。

それは、一冊のノートでした。

いつか、もとの持ち主が、そのノートを取りにあらわれるだろうと思いな
がらも、ときはすぎ、かのじょは、ついにノートを開いてしまいます。

そこにつづられていたのは、小学校で4年生の担任をつとめる真野伊吹と
いう女性の日常のできごと。

そのときから、香恵の平凡だった日々が、おおきくかわりはじめます。

伊吹先生とこどもたちや親とのかかわり、問題をかかえる生徒に悩む姿、
思いをよせている男性とのこと…

クローゼットの奥で眠っていたノートに書きつけられていた言葉たちは、
はたして、香恵のこころのなかで生彩をはなちながら、その現在とリンク
していくのです。

■著者:雫井脩介 ■出版社:角川書店 ■価格:税込1575円

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by revenouveau | 2006-05-24 09:26 | 立読のようなもの

サン・ピエールの生命

(「立見のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


                             ★★★☆☆

19世紀半ば。カナダにあるフランス領のサン・ピエール島。

この島に軍隊長として駐屯しているジャンと、美しく純真な妻マダム・ラ
は、深い愛のきずなで結ばれていました。

ニールは、荒くれものの漁師。

ある日、かれは、酒に酔ったいきおいで殺人を犯し、死刑を宣告されたの
ですが、島には、法で定められた処刑の道具ギロチンがありません。

サン・ピエール島に、ギロチンが運ばれるまでのあいだ、ニールは、マダ
ム・ラの身の回りの世話をすることになりました。

かのじょは、ニールに、読み書きを教えたり、外出先に付き添わせたりと、
行動をともにするうち、かれへの母性とも愛ともとれるような感情を抱き
はじめるのです。

ニールは、また、未亡人マルヴィランの家の屋根を修理したことをきっか
けに、島の人々との親交を深めていきます。さらに、暴走する荷車の女性
を救ったことで、かれは、ますます島の人気ものに。

マルヴィランは、ニールを愛しはじめ、やがて、ふたりは神父の前で永遠
の愛を誓います。

そんな日々も、つかのま。いよいよ、ギロチンが島に到着。

ニールの死刑執行に反対する島の人々。マダム・ラもまた、かれの処刑に
疑問を感じはじめ、人々と妻の声に、心をうごかされたジャンは、処刑の
立ち会いを拒否。マダム・ラは、ジャンの立場が危うくなるのを承知で、
ニールを逃がそうとしますが、失敗し、事態は、かなしい展開に…

ニールは、ギロチンで処刑。数カ月後、ジャンは、反乱罪で銃殺刑に。

うちひしがれたマダム・ラは、じぶんが死をむかえるまで、未亡人でいる
ことを誓うのでした。

手持ちカメラの多用や不安定な構図。そのすえに、立ちどまったカメラが
みせる、みごとなまでに美しい構図。カメラという「目」がみせる表情に
よって、感情がゆたかにあらわされている点にも注目したい作品です。

■監督:パトリス・ルコント ■初公開:1999.
■出演:ジュリエット・ビノシュ、ダニエル・オートゥイユ、ほか

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by revenouveau | 2006-05-23 09:11 | 立見のようなもの

め き き   (13)



 つぎに冴香と顔をあわせたのは、二週間ほどした秋の夕ぐれである。
 保雄が工房を借りている民家の裏手から帰ってくると、工房の軒下に
人影がありそれが冴香だった。離れの廂に懸けられた杉板の〈草木庵〉
と書かれた保雄の父の筆のあとを目で追っていた。
 冴香は、このあいだとはうってかわって、ブルージーンズに木綿のシ
ャツを着て薄手のカットソーををはおり、足もとはカジュアルな靴を履
いていた。
「また、取材ですか? だいぶ待たれたでしょう」
 こんな夕ぐれにどうしたのだろう、と思いながら保雄はたずねた。
「いいえ、ほんの五分ほど…。それより、わたしのほうこそ、なんの前
ぶれもなく訪ねてきたりして、ごめんなさい」
 じっさい、冴香が〈草木庵〉に到着した時刻とあわせるように、偶然
保雄は戻ったのだった。
 冴香は、保雄の手にある、白いちいさな花をつけた丈のある草に目を
やった。
「なんですの、それ」
「ああ、これですか、藤袴というんです。この裏の家のおばあさんが育
てているんで、少しもらってきました」
 保雄は、身体をねじるようにして裏手を見た。
「なんだか、野草のような感じなのに、栽培を?」
「ええ、もともとはそうでした。でも、いまでは、そうでもしないと手
にはいりません。野の草だというのに栽培しなければならないとは、か
なしいですね」
 きたなくしてますが、あがってください、と保雄は先だって工房には
いった。もうすぐ秋の日が山のきわに落ちようとしていたが、そとでの
立ち話もなかろう、と保雄は、冴香をなかへの招じたのだった。

                           (つづく)

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「めきき」は、毎週月曜日・木曜日(平日)に掲載します。

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by revenouveau | 2006-05-22 09:15 | 小説のようなもの

アタシ、どこか間違ってる?  (4)

「さえらは、本日お休みをいただいております」


さて、この言い方のどこが間違っているのでしょうか。

正解例は、こちら...
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by revenouveau | 2006-05-19 19:41 | 美句のようなもの

不機嫌なジーン  Male Nature

〜 ハリウッド版リメイク(さえら案)〜


                         期待度:★★★☆☆
                         実現度:☆☆☆☆☆
【キャスト】

蒼井仁子(竹内結子)
     ■シエナ・ギロリー 
南原孝史(内野聖陽)
     ■マシュー・マコノヒー 
白石健一(黄川田将也)
     ■ヘイデン・クリステンセン 
吉田 佳(もたいまさこ)
     ■ダイアン・キートン 
勝田隼人(オダギリジョー)
     ■セス・グリーン 
神宮寺潤(小林聡美)
     ■レニー・ゼルウィガー 

※ほか検討中

【ストーリー】

シエナは動物行動学を専攻する学者のタマゴ。
かのじょは、〈男性=オス〉というものは絶対に浮気をする生き物であり、
それは「オスが悪いんじゃなくて、オスの遺伝子(ジーン)が自らを複製
していくために、そうした指令をだしてオスを操っているんだから仕方が
ない」という生物学の通説?を知っています。
ある日、平凡な日々を送っていたかのじょの前に、むかし付きあっていた、
著明な学者・マシューがふたたびあらわれ、まったく未練のないかのじょ
に復縁を迫ったのでした。
過去のことで男性不信になったシエナでしたが、小学校の教師をしている
年下のヘイデンとの出会いや、マシューの猛烈なアピールにこころが揺れ
はじめて…

■監督:シャロン・マグワイア ■初公開:未定
■出演:上記参照

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by revenouveau | 2006-05-19 09:35 | 立見のようなもの