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陰日向に咲く

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


つっぱりの落語家や通販オタクなど、マニアックなキャラクターを演じる
一人芝居で人気の劇団ひとりさんが小説をだしました。

そこに描かれているのは、ホームレスにあこがれるサラリーマンをはじめ、
片思いに身をこがすアイドル オタク、 20歳の女性フリーター、小心者の
ギャンブラー、 家出少女。

いつのまにか、現代社会の片隅に追いやられ、空まわりしてしまっている
ひとびとの悲喜劇を5つの連作短編にまとめています。

たとえば、サラリーマンからホームレスに転身?した男性は、先輩のホー
ムレスに見栄をはるため、買ってきたお弁当を(拾ったことにするため)
賞味期限がきれるまで隠してみたり…

癖のある主人公たちが登場する世界は、さながら、かれの一人舞台の世界
へとつながっていくようです。

どうせ、タレント本とあなどることなかれ。

いい意味で、読むひとの、期待を裏切ってくれる一冊です。

■著者:劇団ひとり ■出版社:幻冬舎 ■価格:税込1470円

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by revenouveau | 2006-03-31 20:35 | 立読のようなもの

花に 人に


あどけない空たかく
粛々と往く雲にも似た
いにしえの巨人たちは
みただろうか

めぐりめぐる
ふだんの
あまりにもはなやかな光景

午前6時の陽光を深呼吸して
枝先にはきだす
ほの白い火焔

そこ此処で
やわらかな花弁が
樹皮の粗硬をつき破っている

やむにやまれぬ自身の表現
やむにやまれぬ生命の横溢

わたしは融けていく
自らの世界を刻々と完結させながら
なおあるがままに
外部と関わろうとする姿に

わたしは歩む
光に抱かれる時の岸辺を
あるがままの
無垢な言葉と交わりながら

わたしは感じる
花とわたしを
貫く
ひとつの法則を

はなに
ひとに
花はひとしく実在する

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千鳥ヶ淵の桜

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by revenouveau | 2006-03-31 08:06 | 詩歌のようなもの

変調 モモタロウ狂想曲   (番外編)

                   (「相田みつを」のような)


鬼だって

ほんとうは

泣きたいくらい

こわいんだよ
        みつを


                    (「爆笑問題」のような)


太田 「鬼退治したのお前か」
田中 「なんだよ、いきなり!」
太田 「だから、お前が桃太郎なのか?」
田中 「ちがうって!」
太田 「桃太郎でも、小学生でもないのか、お前は?」
田中 「小学生なわけねぇだろ! 桃太郎でもねぇ!」
太田 「じゃ、鬼か? それも、子鬼だな」
田中 「ますます、わかんねぇよ!」



                     (「ヒロシ」のような)


              BGM:Che Vuole Questa Musica Stasera

俺のモモがありません!

タロウです。タロウです。タロウです…


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by revenouveau | 2006-03-30 18:41 | 小説のようなもの

変調 モモタロウ狂想曲   (6)

                     (「椎名誠」のような)


 だれが鬼が島へなんか、行くっていったのかね。まったく。早くも、
まぁちょいとばかり座らせてくださいませ、という状態なのだ。舟をお
りて、赤鬼煙草店の角を右に折れたとたん、道路は何のあいさつもなく
一方通行左折左折でこんちくしょう、というかんじ。
 しかし、それにしてもなんつうかね、その対決の一瞬を待っている嗜
虐的気分というものは、これはもうじつに言葉乱れちゃうけど、マゾヒ
スティックとサディスティックをまぜこぜにして、ワハハ本舗と吉本興
業をちりばめ、ミルコ・クロコップの怒声とともに、ぶるんっぶるんと
こねくりかきまわしたような「やったるでェ、いてまうでェ、しばいた
るでェ」というかんじになってるのね。
 とかなんとかいってるうちに、富士山の七合目あたりにヨタってる岩、
といったかんじのゴツイ顔を平均不機嫌度八十三パーセント前後ぐらい
にした鬼があらわれた。混雑電車の中年サラリーマンみたいな腹をして、
ツノなんか一本二本頭にくくりつけてよォ。おもしれー顔しやがって、
けっーというようなズルムケ視線を照射しつつ、負けてなるかとこちら
も応戦するのだ。
 いったん戦闘をはじめてしまうと、場合によったら対戦のどさくさに
まぎれてヒジ打ちやカカト落としのひとつやふたつトバしてくるかもし
れない。それならこい! こっちはやるぞ、文句あっか。
「うるせい!」というスルドイ表情および態度というものをあらわにす
る暇をあたえず、こっちは2LDK昼さがり姑の新妻いびりというかん
じで先制攻撃。
 おい、くっつくな!弁当箱の海苔というぐあいの思いがけない衝突に、
やつら、ツバぜりあいで、ゴロまくは、ゲロもはくは、納豆はこぼすは、
痰壺はひっくりかえすは、赤ん坊は泣きわめくはで、圧倒的にこっちの
勝利なのだ。こうなると、もうどうでもいいけんね、わしら、とやつら
はやたらとやる気をなくしてしまうのであった。

                           (つづく)

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by revenouveau | 2006-03-30 10:25 | 小説のようなもの

ガール

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


オフィス小説。(はたして、そんなジャンルがあるのでしょうか)

仕事をめぐって沸きあがる喜怒哀楽を描いた短編集。 40代の男性に焦点
をあてた「マドンナ」につづく、新作の主人公は30代の女性たち。

書いたのは、あるインタビュー記事で「 30代の女性って、いまいちばん
プレッシャーにさらされているように見える。(中略)エールをおくりた
いと思ったんです」と述べている奥田英朗さん。

そして、「解決しない問題は世の中にたくさんある。でも解決しないまま
前向きに生きることだってできると思います」とも。

収録されているのは、5つの物語。

     職場で「ナメられている」と感じた。
     親に結婚をせかされた。
     若い後輩の肌つやに見とれた。
     思わずたんかをきってしまった。
     ひとめぼれをした。
     子どもの寝顔を見て「がんばろう」と思った。

ときには失敗もあるけれど、そんなことにはひるまず、問題に立ちむかう
ガールたちは、とてもたくましくて、たまらなくキュート。

■著者:奥田英朗 ■出版社:講談社 ■価格:税込1470円

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この記事へのコメント(転記)
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by revenouveau | 2006-03-29 08:30 | 立読のようなもの

死神の精度

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


主人公〈私〉の仕事は、対象となる人物の身のまわりをさぐり、一週間の
調査を終えると、あるところに結果を報告すること。そして、その結果が
「可」である場合、対象となる人物にたいして、報告日の翌日となる8日
目に「死」が実行されるのです。

死神。それが、この小説の主人公。

あるお話しは恋愛小説のように、あるお話しはミステリーのように、ある
お話しはロード・ノベルのように…

ひょうひょうとした死神の目からみた6つの人間模様がつづられます。

生と死に向きあいつつも、あたたかなものが伝わってくる伊坂幸太郎さん
ならではのリズムのある文章。

じっくりと味わいながらお読みください。

                ●

ひとつ言い忘れたことがありました。死神は、対象となる人物が住む市区
や町の名を名乗ってあらわれるそうです。(この物語のなかでは千葉)

ねんのため、お知らせまで。

あっ、玄関チャイムが。(だれか来たようです)

−−−私、■■と申します。さいきん、この近くに……

(これって、まさか! わたしの番? まだ、はやいんじゃない?)

8日後に記事が更新されなかったら、「可」だったんだと思ってください。

■著者:伊坂幸太郎 ■出版社:文藝春秋 ■価格:税込1500円

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by revenouveau | 2006-03-28 09:11 | 立読のようなもの

変調 モモタロウ狂想曲   (5)

          (「日本恍惚機構〈じゃろ?〉会員」のような)


 ワシは、桃太郎だ。いや、桃太郎になった夢を見ているだけかもしれ
ない。しかし、夢だとしても今は関係ない。夢から醒めるまでは、桃太
郎になりきるしかない。
 腰にはキビダンゴ。手には日本一の幟旗。このかっこうを見るかぎり、
やっぱり、ワシは桃太郎なのだ。
 おや、道のむこうにだれかいる。
 サルのようだが……。待てよ、サルに化けた、あの意地悪な鬼嫁かも
しれない。
「桃太郎さん、お腰のキビダンゴ、くださいな」
「だれが、桃太郎なんじゃ」
「何言ってるんですか、あなたが桃太郎さんでしょ」
「ちがう……。あっ、UFOだ!」
「え? どこです?」
「ウソにきまってるじゃろ。でも、ワシ、ほんとうはETなんじゃよ」
「まぁ! そうだったんですか。それならそうと、はじめから言ってく
だされば……。水くさい」
「何を言うか。お前はすぐ、年寄りの冷や水と言うではないか」
「いえ、わたしは、まさか桃太郎さんがETだったなんて知らなかった
ものですから……。でも、よかった。桃太郎さんがETだったなんて、
みんなに自慢できますからね」
「何をとぼけてるんじゃ。このへんの者はみんな、ETなんじゃ。お前
だけが違う。かわいそうになぁ」
「……」
「じゃが、仲間に入れてやってもえぇぞ」
「それは、うれしい。じゃあ、さっそく」
「それには、鬼が島へ一緒に行って鬼退治をせなあかんぞ」
「え? まさかそんな……」
「何が、まさかじゃ。この馬鹿嫁が!」
「馬鹿嫁だなんて……」
「だれが馬鹿嫁と言ったんじゃ。お前はサルにきまっとるじゃろ」
「だって、いま……」
「お前さんも相当ボケていなさるようじゃの」
「わたしは、ただ、桃太郎さんに調子をあわせていただけですよ」
「馬鹿な! 調子をあわせていたのは、ワシのほうじゃ」
「だって……」
「何が悲しくて桃太郎がETにならな、あかんのじゃ」
 何で世の中、こんなにボケているんじゃろう。このワシが年寄りだと
思っていいかげんにあつかっているのだ。
 さらに歩いていくと、イヌとキジが現れた。こいつらもまたボケてい
るらしい。ワシと一緒に鬼が島へ行って鬼退治をするのだ、などと言っ
ている。
「お伴しますよ、桃太郎さん。さぁ、鬼が島へ出発だぁ」
 いつでもこうだ。ワシがボケていると思って、からかっているんじゃ。
表面はなんとなくおだてたような口振りだが、結局は馬鹿にしくさって。
ヤバいぞ。これは罠だ。
 ……おーい、だれか。だれか、たすけてくれーっ。

                           (つづく)

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by revenouveau | 2006-03-27 09:43 | 小説のようなもの

ダ・ヴィンチ・クイズ 501 暗号の謎を解け

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


ダン・ブラウン氏による世界的なヒット作で、映画化もされ、5月に公開が
予定されている「ダ・ヴィンチ・コード」。

その知的でスリリングな展開のおもしろさに魅了された方もおおいのでは
ないでしょうか。

今回、ご紹介するのは、「ダ・ヴィンチ・コード」の謎に満ちあふれた世界
をクイズにした一冊です。

小説のファンなら、思わず取り組んでみたくなる珠玉の501問。

さて、あなたは、そのうち難問を制覇できるでしょうか。

■著者:トレーシー・ターナー ■翻訳:八木正三
■出版社:エクスナレッジ ■価格:税込1000円


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by revenouveau | 2006-03-25 09:19 | 立読のようなもの

ハルカ・エイティ

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


持丸ハルカ(遥)から、小野ハルカ(遥)へ。

主人公は、80年の人生で、いちどだけ名字がかわります。

大正9年に生まれ、時代のながれに逆らうことなく生きてきた、ひとりの、
ふつうの女性の生きざまが、ひょうひょうと、しかしあざやかにつづられ
た物語。

そのようすは、つぎの一文に、象徴的にあらわれています。

   ハルカは鶇で「少女」として暮らし「女学生」になり、二十歳で
 “片づく”をして、舅姑の家の「嫁」となり、みかん畑の官舎で毎晩、
 “よくわからない”結合をし、出産をして、「母」となった(以下略)

それが、あたり前だった時代のことを、あたり前と思わない世代の読み手
にも、主人公の思いを自然に受けいれさせてしまうのは、姫野カオルコさ
んの筆のなせるワザなのでしょうか。

そして、この作品の、もうひとつの特徴となっているのは、ドキュメンタ
リーではないけれど、昭和という、あまりにも近く、あまりにも知らない
時代の事実(できごと、人物など)を織りまぜながら、主人公がおかれた
時代背景として描いていること。

そうしたリアルな側面が、主人公に、つねにつきまとっていた太平洋戦争
の影をしっかりと浮き彫りにしているように感じました。

■著者:姫野カオルコ ■出版社:文藝春秋 ■価格:税込1995円

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by revenouveau | 2006-03-24 11:25 | 立読のようなもの

変調 モモタロウ狂想曲   (4)

                    (「伊丹十三」のような)


 こんな塩梅で、かの英雄・桃太郎は誕生したのである、とわたくしは
子どものこと聞かされていた。
 つまり、桃太郎というのは、強くなくてはならぬ、明るくなくてはな
らぬ、正義の人でなくてはならぬ、のです。
 ちかごろ「武勇伝、武勇伝」などとのたまっている芸人がいるわけで
すが、まさしく桃太郎の物語こそが「武勇伝」なのである。
 やっぱり、額には凛とハチマキ。陣羽織は金糸銀糸の絢爛豪華がいい
でしょう。腰にはキビダンゴ。とうぜん、おばあさんの手づくりで。幟
旗には、たとえば日本一といきたいのです。いや、ぜったいそうだと思
うのです、わたくしは。
 みんなをイジメる悪い鬼を退治に行くっていうのがいいじゃないの。
これにはまいりますよ、オトナもコドモも。
 しかし、考えれば考えるほど「桃太郎」というお伽噺は人の心を引き
つける壮大なロマンであったように思えてきますなぁ。
 何ゆえ日本人は、こういうストーリーに果てしなく共鳴するのか。
 これはねぇ、いいたくないけど、あえていえば、日本の社会とは、い
わゆる「タテマエ社会」なんだよ。ホンネを表に出してはならんのだよ。
つまり、根っからのブリッ子なんだよ。ね、だから、桃太郎という物語
にひたすら引かれていくわけです。
 困ってしまう。
 それにしても、桃が鬼に拾われなくてよかったと、つくづく思います
ね、わたくしは。「悪い人間を退治だ!」とこられた日には、まっさき
にやられてしまいそうだから…… (困ってしまう、とか言ってる場合
じゃなくなってきますよ、ほんとうに)

                           (つづく)

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by revenouveau | 2006-03-23 08:59 | 小説のようなもの