カテゴリ:立読のようなもの( 283 )

家族の言い訳

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青いイナズマ、SHAKE、ダイナマイト、…

これはもう、いわずと知れたSMAPのヒット曲ですね。

その作詞を手がけたのが、今回ご紹介する本の作者、森浩美さん。

作詞作品は若々しい印象の森さんですが、この短編集では「家族」を題材
にしっとりとした物語をつむいでいます。

夫が蒸発した妻、妻に別れを切り出された夫、母に捨てられた息子、死期
がせまる母と子どもたち、…

家族という絆でむずばれているがゆえの淡々とした悲しみやせつなさ、そ
してささやかな幸せ。家族に悩み、家族によろこぶ。そんなひとびとの姿
が、こころに響いてくる短編集です。

■著者:森 浩美 ■出版社:双葉社 ■価格:税込1470円

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by revenouveau | 2007-12-12 09:12 | 立読のようなもの

夜明けの街で

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お盆休みあけ、妻子とともに幸せな生活を送っていた渡部が働く建設会社
に、派遣社員としてやってきた仲西秋葉。

はじめのうちは、なにごともなかったのですが、夜のバッティングセンタ
ーでの偶然の出会いからふたりの関係は深まり、ついに越えてはならない
一線を越えてしまいます。

   不倫する奴なんで馬鹿だ。
   ところが僕は、その台詞を自分に対して発しなければならなくなる。
  ただし、その言葉の後に、こう続ける。
   でも、どうしようもない時もある。         (本文より)

しかし、秋葉の家庭は複雑な事情を抱えていたのです。

かのじょの両親は離婚し、母親は自殺。その後、父親の愛人が殺されると
いう事件まで(15年前のこと)。

当時、殺害現場に倒れていたことから真犯人との容疑をかけられながらも、
沈黙をつけけてきた秋葉。

殺人者かもしれない女性との不倫の恋に揺れうごく渡部のこころ。

ふたりの関係がはじまって半年あまり。事件は、まもなく時効をむけよう
としていました。

■著者:東野圭吾 ■出版社:角川書店 ■価格:税込1680円

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by revenouveau | 2007-11-22 09:36 | 立読のようなもの

ロック母

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未婚で妊娠をし、出産のため瀬戸内の島に里帰りした主人公を待っていた
のは、あいかわらずなにもない島の暮らしと、おかしくなってしまった母。

母は、じぶんが残していったロックのCD(ニルヴァーナなど)を大音量
で流しながら人形のきものを縫っていたのです。

表題作の「ロック母」(川端康成文学賞受賞)ほか、1992年から2006年
までの間に、角田光代さんが発表した7つの短編を収録。

   二十歳の自分が私のすべてではないように、一編の小説は
   それだけでは完結していない。そしてやはり人と同じよう
   に、小説も年をとったり、すがたかたちを変えていく。こ
   の短編集で、そんなことをも読みとっていただけたらとて
   もうれしい。

と、ご本人が〈あとがき〉で述べているように、角田さんの人生の足跡の
ようなものも感じとれる興味深い構成となっています。

■著者:角田光代 ■出版社:講談社 ■価格:税込1365円

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by revenouveau | 2007-11-15 09:19 | 立読のようなもの

ボタ福

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せんべいの町で育った大福の〈ふくお〉とカステラの町で育ったぼたもち
の〈ボタ子〉。

べつべつの場所で育ったふたりの悩みは、じぶんはどこからきたのかとい
うこと。

ある日、テンガイコドクのふたりが偶然に出会い、ふるさと探しの旅にで
かけます。

似ているけれど、それぞれにちょっとずつちがうふたり。そんなちがいが、
あるときは好きだったり、あるときは嫌いだったり…

キュートなお餅たちのあたたかくせつない気持ちが、じわじわと、こころ
に迫ってくる絵本です。

おわりに用意された、「あっ」という結末も見逃せません。

■著者:オイカワショータロー イラスト:伊津野果地 
■出版社:講談社 ■価格:税込1890円

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by revenouveau | 2007-11-08 09:24 | 立読のようなもの

はじめての文学

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読書の秋も深まってまいりました。

ふだんはゲームやビデオなどを楽しんでいるあなたも、この秋は、読書に
親しんでみてはいかがでしょうか。

「で、なにを読めばいいの?」

はい。それは、とてもだいじな質問です。

なにをはじめるにしても、最初の一歩がかんじん。

そこでおすすめしたいのが今回ご紹介する〈はじめての文学〉シリーズ。

   村上春樹    村上 龍    よしもとばなな
   宮本 輝    宮部みゆき   浅田次郎
   川上弘美    小川洋子    重松 清
   桐野夏生    山田詠美    林真理子   (刊行順)

現代日本の文学界を代表する、個性豊かな12人の人気作家が、ご自身の
作品のなかから、「まずは、これから」という中・短編を選びました。

それぞれに“はじめての読者”にむけた作家のメッセージが感じられる
極上のアンソロジー。

気になる作家をもっとよく知りたいあなたにもおすすめです。

■著者:上記参照 ■出版社:文藝春秋 ■価格:各 税込1300円

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by revenouveau | 2007-10-26 09:26 | 立読のようなもの

タタド

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環境省の水質調査で最高レベルのトリプルAを獲得したこともある、青く
透き通った海と白い砂浜。それが静岡県下田市にある多々戸浜。

そこからつけられたタイトルは「タタド」となり、抽象的な場所のイメー
ジに。カタカナの乾いたひびきも、小説の世界を象徴しているかのよう。

物語に登場するのは、地方テレビのプロデューサーをしているイワモトと
妻のスズコ、イワモトの番組に出演している女優のタマヨ、そしてスズコ
の元同僚のオカダ。

海辺のセカンドハウスに集まってきた50代の男女4人。

昼間は浜で海藻を拾ったり、夜は部屋で夏みかんを齧ったり、そんなあど
けない時間のなか、倦怠と淡い官能が交差して…

場所のちからが、かれらのからだを開いたのでしょうか。

川端康成文学賞を受賞した表題をふくめ、全3編を収録した短編集。

偶然再会した同級生夫婦の家での住み込みの仕事に就いた男性の姿を描い
た「45字」もおすすめです。

■著者:小池昌代 ■出版社:新潮社 ■価格:税込1470円

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by revenouveau | 2007-10-19 09:06 | 立読のようなもの

とりつくしま

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亡くなって、あの世にやってきたひとのところに、のっぺりとした白い顔
をした何者かがやってきて、こう問いかけます。

「心残りはありませんか?」

その名も〈とりつくしま係〉。

この世に心残りがあるひとは、なにか(生きていないモノ)にとりついて、
一度だけもとの世界にもどることができるというのです。

妻は夫が愛用していたマグカップに、弟子は先生への贈り物にした扇子に、
ちいさな男の子は母親と遊んだ公演のジャングルジムに、父は家族を癒す
マッサージ器に、……

それぞれが、なにかにとりついて、この世にのこされたひとたちをやさし
く見守ります。

せつなくて、あたたかい10本の連作と番外編1本を収めた短編集。

読みおわったあと、ふしぎな感情につつまれる一冊です。

■著者:東 直子 ■出版社:筑摩書房 ■価格:税込1470円

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by revenouveau | 2007-10-12 09:16 | 立読のようなもの

グラビアの夜

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男性向け雑誌の巻頭をかざる水着グラビア。そこにかかわる人々を語り手
に、ひとつの世界を描きだした短編集です。

   グラビアの夜(編集者)

      白い海で泳ぐ水着(スタイリスト)

         メイクルーム(ヘアメイク)

            うさぎ狩り(カメラマン)

               バスローブ(マネージャー)

                  マリアさまのカメラ(モデル)

あえて二流どころの雑誌の撮影現場を舞台に設定したというのも林真理子
さんの感覚が光るところ。

一流になるためにリスクを背負うよりも、そこそこの場所で気楽に生きて
いく。本来ならば野心をもったひとたちがいるはずの世界の、そんないい
ようのないぬるさのなかに、現代社会の体力のなさがリアルに浮びあがっ
てくるのです。

けれど、ひとは、そこにじぶんの“居場所”をみつけようとするのも現実。

ご自身の編集者が、かつてグラビアを担当していたことをきっかけに生ま
れたこの物語は、林さんの新たな面をみせてくれたような気がします。

■著者:林真理子 ■出版社:集英社 ■価格:税込1365円

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by revenouveau | 2007-10-01 09:13 | 立読のようなもの

ダーティ・ワーク

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健康診断で心臓の再検査を告げられた女性スタジオミュージシャン、外車
ディーラーに勤める車好きな女性、カマロに乗りカメの飼育日記のサイト
をもつ男性、自分のことを「オレ」とよぶ悪性リンパ腫の女性、趣味で写
真を撮りつづけている花屋の男性、…。

登場するのは、過ぎ去っていく日々のなかで、ふとした瞬間に、喪失感や
孤独感をおぼえてしまうひとたち。

一人ひとりが、それぞれの日常を生きながら、だれかのことを思い、つな
がっていこうとする。そんな感情を、絲山秋子さんは、みごとにすくいあ
げていきます。

ばらばらのように思えていた物語は、いつしか、ひとつの世界に。

タイトルの「ダーティ・ワーク」は、ローリング・ストーンズのアルバム
にちなんだもの。各章がアルバムにおさめられた曲名をメチーフにつづら
れていく連作短編集です。

■著者:絲山秋子 ■出版社:集英社 ■価格:税込1365円

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by revenouveau | 2007-09-27 09:14 | 立読のようなもの

包帯クラブ 〜Tha Bandage Club〜

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先週末に公開された映画の原作についての過去記事を再掲します。

                ●

ときに理不尽を感じさせる世の中に生きるわたしたちの、苦しみのひとつ
ひとつを、小説のなかで解体していくかのような天童荒太さんの世界。

7年ぶりの書き下ろしが誕生しました。

ワラ、ディノ、タンシオ、ギモ、リスキ、テンポ。

関東のはずれの町にくらしている高校生たち。

だれもが、毎日、どこかで傷ついている……。あるとき、傷ついた場所に
包帯を巻いてみたら、気持ちがすっと楽になったのです。

大切なものを守ろうとして、懸命にたたかっているつもりでいると、別の
大切なものが失われている。かれらは、たたかわないで、じぶんたちの大
切なものを守ることにしました。

悩み、考え、行動し、挫折し、また立ちあがっていく少年少女。

町じゅうに包帯を巻いて、町じゅうの傷を癒して……

■著者:天童荒太 ■出版社:ちくまプリマー新書
■価格:税込798円

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by revenouveau | 2007-09-21 09:51 | 立読のようなもの