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空中庭園

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


【なんとなく 角田光代ウイーク 再掲1/2】

だれでも、ひとつ、ふたつの秘密はもっているものです。

かたくなに心の奥底にしずめているようなものではなく、なんとなく言いだ
せないでいるような、ちょっとしたこととか… たぶん、そんなものも。

郊外の団地で暮らす京橋家のモットーは、「なにごともつつみかくさず」。

しかし、ほんとうは、みんながそれぞれ秘密をもっているのです。

ひとりひとりが閉ざす透明なドアから見えかくれする風景は、はたして…

京橋家というひとつの家族をモチーフに、ほどよい分量の短編で構成された、
連作小説。

家族。

そういっても、おたがいを完全に理解しあえているわけじゃない。おたがい
を完全に所有しているわけじゃない。それぞれがそれぞれの価値観をもって、
じぶんの人生のなかに、家族という存在を位置づけていきます。ぼんやりと。

ひとりでいれば秘密にならないものが、だれかといるから秘密にしなければ
ならない必要性。しかし、だれかと関わらなければ、生きていけない人間の
ジレンマ。それぞれが胸のうちに抱えこんでいる闇の部分を、角田光代さん
ならではの筆致で、シニカルに、するどく、そしてあっけらかんとつづって
いるのが印象的な作品。

ベランダのプランターで、行儀よくならんでいるマリーゴールドに、そっと
水をあげたくなりました。

ちなみに、この作品は、小泉今日子さん、鈴木杏さん、板尾創路さんほかの
出演で映画化もされています。(現在公開中・再掲記事掲載時)

■著者:角田光代 ■出版社:文芸春秋 ■価格:税込1680円

空中庭園_d0063999_741564.jpg
by revenouveau | 2005-11-24 07:41 | 立読のようなもの
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