(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)
【なんとなく 角田光代ウイーク 2/5】 角田光代さんの作品に登場するひとたちは、まわりのひととの折り合いを つけることを自発的にしないことが多いような気がします。 それは、愚かしいと思うけれど、しかし、角田さんの、冷静でていねいな 心理描写によって、なぜか共感させられてしまうのです。 さて、表代作の「地上八階の海」は、こんな感じ。 兄夫婦とおなじマンションに引っ越しをしたものの、過去の思い出に溺れ、 目にみえないなにかに怯える母。 とめどなくしゃべりつづける兄嫁と、うっとうしい泣き声を響かせつづけ る赤ん坊。 ストーカーとなって、異様な手紙をポストに投げ込み、無言電話をかけて くる元カレ。 そして、マンションの一室で、ひとり電話番をするだけのつまらない仕事 をこなす日々をおくっている私。 それぞれが、微妙にずれた断絶のなかですごしている毎日。 そんななか、〈私〉は、恋愛や結婚についての感覚が、じぶんとまわりの ひとびととでは、おおきくちがっていることを確認して物語はおわります。 外界と、じぶんとのあいだにある、ざらついたもの。 角田さんの作品の特徴ともいえる、視界に映るものを過剰なまでに観察し ていくような情景描写は、かのじょの繊細さによるというよりも、じぶん と外界のあいだにある違和感を浮き彫りにしていく作業のようにも思える のです。 ■著者:角田光代 ■出版社:新潮社 ■価格:税込1575円
by revenouveau
| 2005-11-22 08:25
| 立読のようなもの
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