(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)
この本の〈あとがき〉の冒頭には、 世に風味豊かなものは数多くあれど、その中でも、とりわけ 私が心魅かれるのは、人間のかもし出すそれである。 とあります。 人間という存在、とくに、からだを使う労働をなりわいとするひとびとに 眼をむけて、そこから滲みだす風味を、山田詠美さんの言葉で描きだした のが、この短編集です。 真っ赤なスポーツカーの助手席にはボーフレンドを、そして、バッグには 森永ミルクキャラメルをしのばせ、70歳になるいまも、現役ぶりを発揮す る不二子とガソリンスタンドで働く孫とのかかわりを描いた表題作のほか、 鳶職の男性をすみからすみまで慈しみ、かれのためならなんでもする女性 や、清掃作業員のかれに食べさせる料理に心血をそそぐ元主婦など、その 当事者にしかわからない〈愛のかたち〉をつづった6編の傑作。 小説は、私にとって、ままならない恋そのものである。 という、山田詠美さんの、作家生活20年目をかざるにふさわしい、まさに 〈風味絶佳〉な作品といえるのではないでしょうか。 ■著者:山田詠美 ■出版社:文藝春秋 ■価格:税込1290円
by revenouveau
| 2005-10-18 07:05
| 立読のようなもの
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