長い日曜日

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


物語の背景となるのは、英・仏軍と、ドイツ軍が、フランスのソンム川
流域でくりひろげた〈La Bataille de la Somme〉。

1917年1月の、ある日曜日。

戦場のあまりの壮絶さから脱走をはかった5人のフランス兵が、最前線
の塹壕に、後ろ手に縛られ、置き去りに。つまり、それは、ドイツ兵に
射殺されることを意味していました。

売春婦のひも、機械工、農夫、大工、そして漁師。この年若い漁師が、
物語の主人公・マチルドの婚約者・マネックでした。

それから、2年半。

マチルドは、死期の近い、ある男性から手紙を受けとります。そこには、
マネックを見かけた、との記述が…。かのじょは、なんども手紙を読み
かえしていくうちに、つじつまのあわない点を発見し、5人のなかの、
だれかは、生きているのではないかと思いはじめます。

ここから、マチルドの長い、死にものぐるいの、不屈の日々がはじまる
のです。はたして、その結末は…

どうして、かのじょは、ここまでつよくなれたのでしょうか。

そんな思いとともに、わたしのなかに想起されたのは、ふたりが子ども
のころ、はじめて出会ったシーンでした。

マチルド、10歳。マネック、13歳。

いつもとちがう道を通って学校から帰宅したマネックは、車椅子の少女、
マチルドをみつけます。

「歩けないの?」とたずねるマネックに、うなずくマチルド。

一度、立ち去って、また、もどってきたマネック。

「友だちはいるの?」 首を横にふるマチルド。

「よければ、ぼくが友だちになるよ」

こうして、ふたりの、心の交流がはじまるのです。

出会いの印象、そして、積み重ねられてきた時間や思い。そんなものの
すべてが、マチルドを、つきうごかしていたのかもしれません。

本書の仏語版にある〈amour infecte〉、つまり、〈感染した恋〉に、
それを解くかぎがあるのだと、わたしは、思うのですが…

■著者:セバスチャン・ジャブリゾ ■翻訳:田部武光 
■出版社:東京創元社 ■価格:税込2447円

d0063999_1112734.jpg


※ちなみに、この小説は、ジャン=ピエール・ジュネ監督による映画
 「ロング・エンゲージメント」の原作です。
[PR]
by revenouveau | 2005-08-19 11:12 | 立読のようなもの
<< プライド  PRIDE(チャラン) 優しい音楽 >>