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オテル モル

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


必要な睡眠時間がとれない状態を、研究者は〈睡眠負債〉と警告し、ある
調査では、日本の、国民の41%がそれにあたるというのです。

4〜5人にひとりが、なんらかの睡眠障害を抱えているいま。救世主とも
いえるような、ホテルがここにあります。

しあわせな眠りを提供するという、不思議なホテル〈オテル・ド・モル・
ドルモン・ビアン〉の物語。

チェックインは、日没後。チェックアウトは、日の出まで。すべてが地下
にあり、最下階は13階、客室は99部屋。

ここで働くのは、よさそうだ、という予感。読むたびに、なぜかひかれて
いった求人広告で、最良の眠りを会員に提供するホテルのフロントに職を
得た本田希里。ホテルの募集条件は、夜に強く、孤独癖があり、いらいら
しないことでした。

そして、なによりも、かのじょが採用された理由は、その〈誘眠顔〉。

ホテルの面接官いわく、主人公・本田希里の顔は、ひとの眠りを誘う顔だ
というのです。

そんな、かのじょのバックグランドは、ちょっと複雑。

家族構成は、両親、一卵性の双児の妹と、妹の娘、その子の父親。しかし、
現在は、妹が、病気療養のためリハビリ施設にいて、両親がそばについて
いるので、姪とその父親との三人暮らし。(しかも、その父親というのは、
主人公の元カレ)

宿泊者である会員に安眠を提供するための、さまざまな心配りがなされた
幻想ともいえるようなホテルで働く希里のまわりで、いつしか、閉息した
家族関係にも変化があらわれるのです。

やわらかさと、せつなさとが、交錯する世界を、どうぞお楽しみください。

■著者:栗田有起 ■出版社:集英社 ■価格:税込1575円

オテル モル_d0063999_8593119.jpg
by revenouveau | 2005-08-11 08:59 | 立読のようなもの
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