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夜かかる虹

(「立読のようなもの」にはネタばれがある場合がございます)


外見は、そっくりだけれど、性格は正反対。甘い声でしゃべり、男たちに
囲まれ、あちこちを渡り歩く妹のリカコ。

かのじょは、ある日突然、ひとり暮らしの〈わたし〉を、男連れでたずね、
買物にいくふりをして、そのカレをそのまま置いて帰ってしまったことも。

あるときは、〈わたし〉を慕うふりをしながら、その一方で〈わたし〉の
恋人まで奪おうとする妹。

じぶんの居場所を、ひたすら、さがしつづける〈わたし〉。

いたくて、せつない、姉妹の関係をリアルに描いた表題作『夜かかる虹』。

そして、もうひとつの収録作品が、ロードノベルともいえる『草の巣』。

「家を作ってんだ」「連れてってやるよ」という、無口な中年男の車に、
ふとした気まぐれで乗り込んだ〈わたし〉が、あてどないドライブのはて
にたどりついた、その場所は、草っぱら。雨ざらしのテレビやちゃぶ台が
あるだけの空き地でした。

そのときから、ふたりの奇妙な関係がはじまったのです。

本の帯には、-----

あなたをいちばんわかっているのは誰?

                        -----とありました。

ちなみに、後者の作品は、桐野夏生さんが『ダ・ヴィンチ』のコラムで、
〈わたしの好きな角田作品〉としてあげていたものです。

冷蔵庫のなかにはどんな食材がはいっているか、床になにが落ちているか、
靴の脱ぎ方は…

桐野さんは、角田さんの、そんな、家のなかの情景を好んで描くところが
お気に入りだとか。

ちいさなことから言葉をさがし、おおきな世界を見ようとしている、角田
さんのこだわりに惹かれているようです。

■著者:角田光代 ■出版社:講談社文庫 ■価格:税込520円

夜かかる虹_d0063999_820879.jpg
by revenouveau | 2005-08-10 08:20 | 立読のようなもの
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